人口、2053年に1億人割れ
厚労省推計、50年後8808万人 働き手は4割減
日本経済新聞 朝刊 1面 2017/4/11 2:30
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は10日、長期的な日本の人口を予測した「将来推計人口」を公表した。1人の女性が生む子供の数が今と変わらない場合、人口は2053年に1億人を割り、65年には15年比3割減の8808万人になる。働き手の世代は4割減とさらに大きく減る見通しだ。政府が経済成長に必要とする1億人を保つのは難しく、政策は大きな見直しを迫られる。
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将来推計人口は国勢調査を基に5年に1度改定している。出生率が足元で改善し、12年の前回試算に比べて1億人割れの時期は5年遅くなった。それでも総人口は9000万人すら保てない。
今回の推計は出生率の見通しを前回試算の1.35から1.44に上方修正した。65年の人口は前回推計の8135万人から672万人増えている。菅義偉官房長官は10日午後の記者会見で「安倍政権の施策が一定の効果を与えている」と語った。
出生率の回復が人口減を緩めた形だが、人口減の流れそのものは変わらない。働き手にあたる15~64歳の生産年齢人口(総合2面きょうのことば)は足元の7728万人から50年後には4529万人へと4割減る。
65歳以上の高齢者の人口は3387万人から50年後に3381万人とほぼ横ばい。そのため全人口に占める割合は26.6%から38.4%に高まる。人口の5人に2人が高齢者となる。
現在の日本は20歳から64歳までの人たちが2.1人で1人の高齢者を支えており、「騎馬戦型」の社会だ。少子高齢化の進展で、65年には1.2人で高齢者1人を支える「肩車型」になる。
今回の推計では20年代にかけて出生率が急上昇し、65年まで1.8を維持してはじめて、人口はぎりぎり1億人を維持できるという見通しが示された。足元の出生率が改善傾向にあるとはいえ、遠く及ばない。
中長期的に働き手を増やすには、出生率を早期に引き上げる必要がある。安倍政権は6月にも新たな待機児童解消プランを打ち出す方針だ。日本福祉大の小峰隆夫教授は「労働力は女性や高齢者の労働参加を促すだけでは維持できない」と指摘する。
当面の人手不足を補うには、外国人労働者の受け入れが必要との意見も根強い。今回の厚労省の推計では外国人を毎年おおむね75万人受け入れれば、50年後の人口も現在より増えると試算した。
ただ、政府は高い専門性を持つ高度人材以外の受け入れには慎重だ。3月にまとめた働き方改革実行計画でも、高度人材以外の労働者の受け入れは「国民的コンセンサスを踏まえつつ検討すべき問題」とするにとどまった。
人口減への対策は大きな課題だが、歴代の政権は高齢者向けの年金や医療・介護を充実する政策を優先してきた。出生率が05年に1.26と過去最低になったころから少子化対策が進められてきたが、保育所の整備といったハード面でも、子育てをしやすい働き方の仕組みを整えるソフト面でも対策は道半ばだ。
厚労省推計、50年後8808万人 働き手は4割減
日本経済新聞 朝刊 1面 2017/4/11 2:30
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は10日、長期的な日本の人口を予測した「将来推計人口」を公表した。1人の女性が生む子供の数が今と変わらない場合、人口は2053年に1億人を割り、65年には15年比3割減の8808万人になる。働き手の世代は4割減とさらに大きく減る見通しだ。政府が経済成長に必要とする1億人を保つのは難しく、政策は大きな見直しを迫られる。

将来推計人口は国勢調査を基に5年に1度改定している。出生率が足元で改善し、12年の前回試算に比べて1億人割れの時期は5年遅くなった。それでも総人口は9000万人すら保てない。
今回の推計は出生率の見通しを前回試算の1.35から1.44に上方修正した。65年の人口は前回推計の8135万人から672万人増えている。菅義偉官房長官は10日午後の記者会見で「安倍政権の施策が一定の効果を与えている」と語った。
出生率の回復が人口減を緩めた形だが、人口減の流れそのものは変わらない。働き手にあたる15~64歳の生産年齢人口(総合2面きょうのことば)は足元の7728万人から50年後には4529万人へと4割減る。
65歳以上の高齢者の人口は3387万人から50年後に3381万人とほぼ横ばい。そのため全人口に占める割合は26.6%から38.4%に高まる。人口の5人に2人が高齢者となる。
現在の日本は20歳から64歳までの人たちが2.1人で1人の高齢者を支えており、「騎馬戦型」の社会だ。少子高齢化の進展で、65年には1.2人で高齢者1人を支える「肩車型」になる。
今回の推計では20年代にかけて出生率が急上昇し、65年まで1.8を維持してはじめて、人口はぎりぎり1億人を維持できるという見通しが示された。足元の出生率が改善傾向にあるとはいえ、遠く及ばない。
中長期的に働き手を増やすには、出生率を早期に引き上げる必要がある。安倍政権は6月にも新たな待機児童解消プランを打ち出す方針だ。日本福祉大の小峰隆夫教授は「労働力は女性や高齢者の労働参加を促すだけでは維持できない」と指摘する。
当面の人手不足を補うには、外国人労働者の受け入れが必要との意見も根強い。今回の厚労省の推計では外国人を毎年おおむね75万人受け入れれば、50年後の人口も現在より増えると試算した。
ただ、政府は高い専門性を持つ高度人材以外の受け入れには慎重だ。3月にまとめた働き方改革実行計画でも、高度人材以外の労働者の受け入れは「国民的コンセンサスを踏まえつつ検討すべき問題」とするにとどまった。
人口減への対策は大きな課題だが、歴代の政権は高齢者向けの年金や医療・介護を充実する政策を優先してきた。出生率が05年に1.26と過去最低になったころから少子化対策が進められてきたが、保育所の整備といったハード面でも、子育てをしやすい働き方の仕組みを整えるソフト面でも対策は道半ばだ。