ヒト型ロボ、世界競争
ソフトバンク合弁にアリババも出資 家で職場で「共生」進む
2015/6/19 3:30 日経朝刊
ヒト型ロボットの実用化競争が激しくなってきた。ソフトバンクは18日、ヒト型ロボット「ペッパー」を20日から一般発売すると発表した。電子機器の受託製造最大手、台湾・鴻海精密工業と中国インターネット通販最大手のアリババ集団と提携し低コスト化と海外販路で先手を打つ。ヒトとロボットが共生する時代を迎え米グーグルや日立製作所などの世界大手も商機をうかがっている。
![]()
「ペッパー」の一般販売を発表する(右から)鴻海の郭CEO、ソフトバンクの孫社長、アリババの馬会長 (18日、千葉県浦安市)
![]()
![]()
「ロボット事業でも世界展開を進めていきたい」。18日にペッパー発売で記者会見した孫正義社長は強調した。ネットや通信に続く収益基盤に育てるためのパートナーが鴻海とアリババだ。
ソフトバンクのロボット事業子会社に鴻海とアリババが2割ずつ出資し、製造、開発、販売を集約する。来年からアリババのネット通販などを活用しながら世界販売に乗り出す。
経済産業省などによると国内ロボット市場は2015年の1兆5千億円から35年には10兆円近くに達する。このうち従来型の産業用ロボットの伸び率は18%にとどまるがペッパーのような「サービス型」は4兆9千億円と13倍。18日の記者会見で登壇したアリババ創業者、馬雲(ジャック・マー)氏は「ロボットは車と同じくらい当たり前の存在になる」と話した。
ロボットはこれまで製造現場で進化してきた。最近はセンサーや人工知能の発達で自分で考え繊細な動きをする「ヒトらしさ」を備えつつある。家庭や職場へ共生の場が広がり、市場規模も格段に膨らむ。世界の大手企業が相次ぎ参入し、幅広い用途の中から鉱脈探しを競っている。
グーグルはスマートフォン(スマホ)に続く成長分野として注目する。M&A(合併・買収)などを用いながら、災害対応や医療など幅広い分野に網を掛ける。
13年に買収したボストン・ダイナミクスのヒト型機種「アトラス」はがれきに埋もれた人の救出などに活用する。米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)とは手術支援ロボット開発で提携した。同分野では米インテュイティブサージカルの「ダビンチ」が先行し、日本でも普及している。グーグルはJ&Jと組みこれを追い上げる。
米アマゾン・ドット・コムは12年にロボットベンチャーのキバ・システムズを7億7500万ドル(約900億円)で買収し商品の配送作業を手助けするロボットを実用化した。人手が必要な物流の省力化を目指す。
ロボット開発で半世紀にわたる実績を持つ日立製作所も18年をめどに共生型ロボットを実用化する考えだ。センサーや人工知能を強化分野に据える研究部門には2千人の研究者を配置している。
ヒト型ロボットには音声や画像の認識・処理のほか、安全対策でも産業用とは異なる技術やノウハウが求められる。スマホが急速に世界に広がるとともに、端末や電子部品の業界で激しいシェア争いが起きた。巨大市場に成長する可能性を持つロボットの主導権争いも世界規模で始まっている。
ソフトバンク合弁にアリババも出資 家で職場で「共生」進む
2015/6/19 3:30 日経朝刊
ヒト型ロボットの実用化競争が激しくなってきた。ソフトバンクは18日、ヒト型ロボット「ペッパー」を20日から一般発売すると発表した。電子機器の受託製造最大手、台湾・鴻海精密工業と中国インターネット通販最大手のアリババ集団と提携し低コスト化と海外販路で先手を打つ。ヒトとロボットが共生する時代を迎え米グーグルや日立製作所などの世界大手も商機をうかがっている。

「ペッパー」の一般販売を発表する(右から)鴻海の郭CEO、ソフトバンクの孫社長、アリババの馬会長 (18日、千葉県浦安市)


「ロボット事業でも世界展開を進めていきたい」。18日にペッパー発売で記者会見した孫正義社長は強調した。ネットや通信に続く収益基盤に育てるためのパートナーが鴻海とアリババだ。
ソフトバンクのロボット事業子会社に鴻海とアリババが2割ずつ出資し、製造、開発、販売を集約する。来年からアリババのネット通販などを活用しながら世界販売に乗り出す。
経済産業省などによると国内ロボット市場は2015年の1兆5千億円から35年には10兆円近くに達する。このうち従来型の産業用ロボットの伸び率は18%にとどまるがペッパーのような「サービス型」は4兆9千億円と13倍。18日の記者会見で登壇したアリババ創業者、馬雲(ジャック・マー)氏は「ロボットは車と同じくらい当たり前の存在になる」と話した。
ロボットはこれまで製造現場で進化してきた。最近はセンサーや人工知能の発達で自分で考え繊細な動きをする「ヒトらしさ」を備えつつある。家庭や職場へ共生の場が広がり、市場規模も格段に膨らむ。世界の大手企業が相次ぎ参入し、幅広い用途の中から鉱脈探しを競っている。
グーグルはスマートフォン(スマホ)に続く成長分野として注目する。M&A(合併・買収)などを用いながら、災害対応や医療など幅広い分野に網を掛ける。
13年に買収したボストン・ダイナミクスのヒト型機種「アトラス」はがれきに埋もれた人の救出などに活用する。米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)とは手術支援ロボット開発で提携した。同分野では米インテュイティブサージカルの「ダビンチ」が先行し、日本でも普及している。グーグルはJ&Jと組みこれを追い上げる。
米アマゾン・ドット・コムは12年にロボットベンチャーのキバ・システムズを7億7500万ドル(約900億円)で買収し商品の配送作業を手助けするロボットを実用化した。人手が必要な物流の省力化を目指す。
ロボット開発で半世紀にわたる実績を持つ日立製作所も18年をめどに共生型ロボットを実用化する考えだ。センサーや人工知能を強化分野に据える研究部門には2千人の研究者を配置している。
ヒト型ロボットには音声や画像の認識・処理のほか、安全対策でも産業用とは異なる技術やノウハウが求められる。スマホが急速に世界に広がるとともに、端末や電子部品の業界で激しいシェア争いが起きた。巨大市場に成長する可能性を持つロボットの主導権争いも世界規模で始まっている。