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サウジ、強硬な「盟主」に サルマン国王即位1年 周辺国と緊張 原油安が打撃

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サウジ、強硬な「盟主」に
サルマン国王即位1年 周辺国と緊張 原油安が打撃
2016/1/23 3:30 日経朝刊

 【リヤド=久門武史】サウジアラビアのサルマン国王(80)が即位して23日で1年になる。この間に隣国イエメンに軍事介入し、対立するイランとは断交した。原油市場では自らのシェアを守るために高水準の生産を続け、結果的に原油安と財政難に苦しんでいる。「中東の盟主」に何が起きているのか。現地で探った。


リヤド市内の随所にあるサルマン国王の肖像写真



 首都リヤドの巨大な商業施設は、午後10時を回ってからが最も活気づく。原油高だった2年前と変わらず、豊かな国民が高級ブランド店で消費を楽しんでいる。しかし、歳入の大半を原油に頼るサウジ経済の変調は、隠しようがない。
 「サウジ側から説明もなく突然止まった契約交渉がある」。日系進出企業の幹部は語る。渋滞解消の切り札として、2018年の完成をうたい建設中の都市鉄道「リヤド・メトロ」は、ひっそりと計画が縮小された。
 サウジは16年予算で10兆円以上の財政赤字を見込み「緊縮」にカジを切った。補助金削減に踏み切り、15年末に燃料や電気料金が一斉に値上がりした。ガソリンは50~67%上がった。
 同国の大手投資銀行ジャドワ・インベストメントのチーフエコノミスト、ファハド・アルトゥルキ氏は「製造業や運輸業、建設業への打撃は大きい」と指摘する。国際通貨基金(IMF)は19日、サウジの16年の経済成長率を下方修正し、過去14年で最低の1.2%と予測した。原油安の影響は広がっている。
 ガソリンを含む光熱費への手厚い補助金には、国政選挙がない国民の不満の芽を摘む面がある。そこにメスを入れるという歴代国王にも難しかった改革を断行したのが、ムハンマド副皇太子(30)だ。経済政策の意思決定機関のトップであり、国防相も兼務。保守的なサウジで経済改革を目指す一方、15年3月に踏み切ったイエメンへの軍事介入を主導している。
 父の国王が即位直後に抜てきし、この1年で軍事から経済、石油政策まで急速に権限を集めた。15年末にはイスラム圏諸国でつくる対テロの「軍事連合」を発表。内相のムハンマド皇太子(56)が担うはずのテロ対策にまで手を広げた。
 イランでサウジ大使館が襲撃された直後の今月3日、サウジはイランと断交した。中東の緊迫を一気に高めた決定に、国王や副皇太子の意思が働いたのは間違いない。
 イランは緊張緩和をアピールするが、サウジは批判を緩めようとしない。「聞く耳を持たないサウジ」を印象づけるのがイランの狙いだとすれば、サウジは術中にはまる可能性がある。
 「穏健路線のアブドラ前国王だったら、こうはならなかった」。サルマン体制によるイエメン介入やイランとの断交について、こんな声が外交関係者の間では多い。核問題の決着で経済制裁を解かれたイランは自信を深める。同国のザリフ外相は皮肉った。「サウジはパニックに陥っている」
 19日、リヤドを訪問した中国の習近平国家主席を、サルマン国王は異例の厚遇で迎えた。サウジ伝統の剣舞に習氏を呼び入れ、並んで剣を振りかざす姿まで写真に撮らせた。
 かつて蜜月だった同盟国の米国は核問題でイランに接近し、サウジとの間にはすきま風が吹く。中国との急速な接近は、強気を貫くサウジの不満と不安を映している。

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