円高・株安、週明けも警戒
海外投機筋、円3年ぶり買い越し 中国の相場対策が焦点
2016/1/10 3:30 日経朝刊
年明けから進んでいる急速な円高・株安の流れが、週明け以降も続くのではないかとの警戒感が強まっている。8日発表の昨年12月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が市場予想を大幅に上回ったが、相場は反転しなかった。中国当局の相場安定策への期待もあるが、海外ヘッジファンドなどはアベノミクス開始以来初めて円の買い持ちに転じている。
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人民元安や原油安などの海外要因が株価の重荷に(8日終値)
3ヶ月間の見通し
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米雇用統計が改善したのに円高・株安が止まらないのは、市場参加者の関心が「米国の金融政策より人民元安や原油安といったリスク要因に移っている」(三菱東京UFJ銀行の内田稔氏)ことが大きい。不安が不安を呼び相場にブレーキがかかりにくくなっている。
米雇用統計の発表直後にはいったん1ドル=118円85銭まで円安となったが、そこから一気に反転し、117円台前半まで円高が進んだ。
リスクに敏感に反応しているのが海外のヘッジファンドだ。米商品先物取引委員会(CFTC)が日本時間の9日に発表した海外投機筋の円の持ち高(5日時点)は4103枚(約512億円)の買い越しとなった。2012年10月16日以来、およそ3年3カ月ぶりで、ヘッジファンドの相場予想が円安から円高に転じたことを示している。
株式市場でも「値動きの荒い不安定な相場が続く」(岡三証券の石黒英之氏)との警戒感が強まっている。中国株安や原油安といった日本株を振り回してきた海外要因がいっこうに収束せず、投資家がリスクを取りにくくなっているためだ。
円高は輸出企業の株価の重荷となる。3月期決算の主要企業の15年度下期の想定レートは1ドル=120円台が中心だ。「円安による業績押し上げ効果が見込みにくくなっている」(JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳氏)
8日のシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で日経平均先物3月物清算値は前日比290円安の1万7280円となり、同日の日経平均株価の終値を400円以上も下回った。連休明けの12日の東京株式市場は安く始まる可能性が高い。
ただ一部には相場の反転を期待する声もある。東証1部の値上がり銘柄数を値下がり数で割って算出する騰落レシオ(25日移動平均)は一般的に70%以下になると「売られすぎ」とされるが、8日時点で63%まで下がっている。円高も2015年の高値である115円85銭の更新が視野に入ってきたことで「円買いの動きは一服する」との見方も出ている。1月下旬には日銀の金融政策決定会合が開かれる。追加金融緩和観測が再び高まれば、円高・株安の圧力が和らぐ可能性もある。
中国市場も今後のカギだ。中国人民銀行(中央銀行)は人民元売買の基準となる対ドルレート「基準値」を8日、9営業日ぶりに元高方向に設定し、人民元安をひとまず食い止めた。相場の急変時に取引を止める「サーキットブレーカー」制度の停止も決まり、中国当局が事態の沈静化に成功すれば円高・株安に急ブレーキがかかりそうだ。
海外投機筋、円3年ぶり買い越し 中国の相場対策が焦点
2016/1/10 3:30 日経朝刊
年明けから進んでいる急速な円高・株安の流れが、週明け以降も続くのではないかとの警戒感が強まっている。8日発表の昨年12月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が市場予想を大幅に上回ったが、相場は反転しなかった。中国当局の相場安定策への期待もあるが、海外ヘッジファンドなどはアベノミクス開始以来初めて円の買い持ちに転じている。

人民元安や原油安などの海外要因が株価の重荷に(8日終値)
3ヶ月間の見通し


米雇用統計が改善したのに円高・株安が止まらないのは、市場参加者の関心が「米国の金融政策より人民元安や原油安といったリスク要因に移っている」(三菱東京UFJ銀行の内田稔氏)ことが大きい。不安が不安を呼び相場にブレーキがかかりにくくなっている。
米雇用統計の発表直後にはいったん1ドル=118円85銭まで円安となったが、そこから一気に反転し、117円台前半まで円高が進んだ。
リスクに敏感に反応しているのが海外のヘッジファンドだ。米商品先物取引委員会(CFTC)が日本時間の9日に発表した海外投機筋の円の持ち高(5日時点)は4103枚(約512億円)の買い越しとなった。2012年10月16日以来、およそ3年3カ月ぶりで、ヘッジファンドの相場予想が円安から円高に転じたことを示している。
株式市場でも「値動きの荒い不安定な相場が続く」(岡三証券の石黒英之氏)との警戒感が強まっている。中国株安や原油安といった日本株を振り回してきた海外要因がいっこうに収束せず、投資家がリスクを取りにくくなっているためだ。
円高は輸出企業の株価の重荷となる。3月期決算の主要企業の15年度下期の想定レートは1ドル=120円台が中心だ。「円安による業績押し上げ効果が見込みにくくなっている」(JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳氏)
8日のシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で日経平均先物3月物清算値は前日比290円安の1万7280円となり、同日の日経平均株価の終値を400円以上も下回った。連休明けの12日の東京株式市場は安く始まる可能性が高い。
ただ一部には相場の反転を期待する声もある。東証1部の値上がり銘柄数を値下がり数で割って算出する騰落レシオ(25日移動平均)は一般的に70%以下になると「売られすぎ」とされるが、8日時点で63%まで下がっている。円高も2015年の高値である115円85銭の更新が視野に入ってきたことで「円買いの動きは一服する」との見方も出ている。1月下旬には日銀の金融政策決定会合が開かれる。追加金融緩和観測が再び高まれば、円高・株安の圧力が和らぐ可能性もある。
中国市場も今後のカギだ。中国人民銀行(中央銀行)は人民元売買の基準となる対ドルレート「基準値」を8日、9営業日ぶりに元高方向に設定し、人民元安をひとまず食い止めた。相場の急変時に取引を止める「サーキットブレーカー」制度の停止も決まり、中国当局が事態の沈静化に成功すれば円高・株安に急ブレーキがかかりそうだ。